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執筆者の写真坂田大輔

寿司食べたい

冬らしい寒空の日が続いております。ピリッと引き締まった空気がなんとも言えず気持ちがいいですね。


さて、先日は緩和ケア病棟にご入院中の方の一時帰宅のお手伝いをさせていただきました。年末にご依頼いただいていたのですがコロナの影響で一度延期になってしまい、ようやく年明けの晴れた暖かい日の午後に1時間程度帰ることができました。


病棟にお迎えに上がると、奥様と娘様がお迎えにいらっしゃり、看護師さんたちと出発準備を進めていらっしゃいました。車椅子に移り、いよいよ出発しようかというときに、ご本人様がポソッと


「寿司食べたい」


とおっしゃいました。近くにいた奥様と看護師さんが聴いておりましたが、「そうね~、食べたいよね~」と冗談のように聞き流しておりました。車に乗って出発すると、車内でもう一度奥様に向かって「寿司、食べたい」とはっきりとおっしゃいました。すると奥様が、


「え?本気なの?今日?今?」


と少しびっくりして聴き返すと、ご本人様は大きく頷かれました。「そうね、そっか、食べたいよねえ、食べていいのかしら、普段何でも食べよるとよね?どうしたらいいかいな?」と困ってしまい、ご本人様は「大丈夫くさ」とおっしゃいます。これはぜひ食べていただきたいのですが、一応看護師さんに電話で確認してみると、少しずつ気を付けて食べてみるように言われたそうです。そこで、家に帰る途中にある奥様行きつけのスーパーに寄って、小さな特上のお寿司パックを購入しました。更にスーパーから車に戻った奥様に、「ぶどうジュースが飲みたい」とおっしゃり、奥様が「じゃああそこのお店に寄りましょう」と違うお店に寄ることになりましたが、残念ながらそのお店には無く、「じゃああそこの自動販売機に寄りましょう。」と、寄りましたが、ぴったりくるものはなく、それに近いものを購入することになりました。


ご自宅に着くと、他にもご家族様がいらっしゃり、お庭にテーブルと椅子を出してお待ちでした。車から降りて日向ぼっこをしながら、家族でお寿司を召し上がります。なんとも穏やかなひと時で、ご本人様はそれはそれは満足気な表情をされておりました。その後は少し自宅とお庭を見て回り、最後にお庭の松の木の前で写真撮影をしました。


病院に帰る車を見送るご家族様は、目に涙をいっぱい溜めながら、一生懸命に手を振っていらっしゃいました。

帰りの道中で奥様が、「また来ようね。」と声をかけます。


暖かくなるころまた帰ることができるといいですね。

ありがとうございました。 写真は二丈の畑です。少しだけ青空が見えました。


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