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執筆者の写真坂田大輔

真実とは

ようやく台風が過ぎ去ってくれました。そしてまた暑い夏が帰ってきましたね。


さて、先日は施設にお住まいで、現在ご家族のいらっしゃらない方の受診の付き添いをさせていただきました。やや遠方の病院でしたので、朝一番にお迎えに上がり、施設の方から紹介状を預かり出発です。普段は歩行器で移動されているとのことで、歩行器ごとご乗車いただき、座席に座っていただいたのですが、広大な病院内を移動するには少しきついとのことで、車椅子を利用することになりました。


色々と疾患をお持ちの方ですが、視力がかなり落ちてしまい、日常生活にかなり支障をきたしているとのことで、少しでも見えるように手術をしてもらうための受診とのことです。大きな病院ですので、患者さんも多く、検査ごとに待ち時間がかなり長くかかります。今回は初めてでしたので、その間にいろいろなお話を聴かせていただきました。ご家族のこと、その家系のこと、学生時代のこと、留学時代、海兵隊時代、働き始めてからのこと、ロンドン時代、ウォール街時代、建てた家のこと、病気のこと、訴訟のこと、今の生活のこと・・・・・。待ち時間の間中、楽しそうに、悲しそうに、怒りながらずっとお話をされていらっしゃいました。私はただただ、傾聴に努め、興味深く聴かせていただきました。しかし、一生では足りないくらいいろいろな経験をされている方だなあ。こんなに大変な偉業を達成した方のお話を聴くことができてとても貴重な体験をさせていただきました。施設ではこんなに話をずっと聴く人はいないと思いますので、ご本人様もとても嬉しそうにされていらっしゃいました。


施設に戻り、スタッフの方に病院での様子と診察内容をお話していると、ご本人様のお話はほとんどが事実ではないでしょう。とのことでした。・・・うすうすそのような気はしていましたが、ご本人様は楽しそうだったのでそれだけで「いい一日だったなあ」と思いました。


3日後の二度目の受診で、施設の方から手術前の問診票を預かりました。私も必要ですのでひととおり読ませていただきましたが、そこには書ききれないほどの既往症と持病が書かれており、その中に「妄想性障害」と書いてありました。その日の待ち時間も前回お聴きしたお話をなぞるように聴かせていただきました。


傍からその方を見て、話を聴いて事実でないように感じても、この方にとっては「紛れもない事実」である。そのことは事実ですよね。そこを受け入れたうえでないと「今」の話はできないと思いました。


この日、更なる身体の不調が発覚し、検査と診察が増えてしまいましたので、この方の受診はもう少し続きそうです。無事に手術が受けられますように。


写真は前原の田んぼ。台風の名残がまだあります。



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