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執筆者の写真坂田大輔

76歳

銀杏の葉っぱがだんだんと黄色くなってきました。

爽やかな秋晴れの日が続いております。


さて、先日は長期入院されている方の他科受診のお手伝いをさせていただきました。そしてご家族様がいらっしゃらないので付き添いもさせていただくことになりました。

ロビーにお迎えにあがると、ご機嫌な笑顔で「こんにちは。」と迎えてくださいます。病院のスタッフの方の話によると、頭痛の訴えがあるのですが、認知症もあり症状がはっきりせず、聴くたびに痛みのある場所が時々変わってしまうとのことでしたが、頭のことなので、一応受診して確認したいということでした。


車に乗って出発したのちに話しかけると、マスク越しにモゴモゴといろいろとお話をしていただけるのですが、いかんせん聴きとりにくく、理解できたり解らなかったり…。


そうこうしているうちに病院へ到着。保険証を出して受付に私が名前を書きます。しばしの待ち時間に少しお話を聴くと先ほどの車内よりは少し聞き取り易くなりました。年齢を聴くと「76歳。」とはっきりとおっしゃいました。


まずは診察室で先生とお話をします。「こんにちは。よろしくお願いします。」と挨拶。症状や近況の話をしますが、噛み合ったり聞き取りにくかったり...。そして先生にも年齢を聴かれ「76歳です。」と答えます。会話はある程度成立するのですが、話しながら呼吸が荒くなったり何度も挨拶をしたり、少し落ち着きがありません。


先生がおっしゃいます。「30分ぐらいじっとしていられますかねえ…。」ご本人様からは何も回答を得られませんでした。本当はMRIでしっかりと検査をしたいところですが、やはり長時間横になってじっとしておくことは、なかなか難しそうでしたので、今日のところは短時間でできるCT検査をすることになりました。


検査を待っている間も重複しつつたくさんの方に挨拶をしました。盛んに口を動かしている間にすぐにマスクがずれてきてしまいますので、その都度直します。

いよいよCT検査です。台に移って検査技師の方の指示に従います。数分間…。特に問題なく終了し、結果を待ちます。


結果発表。名前を呼ばれ診察室に入ると、「キレイキレイ。何も問題ないですよ。」と先生の声。出血も腫瘍も見受けられないとのことでした。「は~。よかったですね~。」と私が言うと、マスクで顔は半分以上隠れているものの満面の笑みです。


その後の待合室でのおしゃべりは一段と声が弾んでいらっしゃいました。

さあ、会計を済ませ保険証を受け取って帰ります。車に乗って、そういえば年齢をちゃんと見てなかったなあ、と気になって、返してもらった保険証を見ると昭和16年生まれ…。

なんと80歳やん!


帰りながらもう一度聴いてみます。

「○○さん、生年月日わかりますかー!?」

「いや~。何年やったかいな。」と笑っていらっしゃいます。

「昭和16年ですよね!」「何月何日か覚えてます?」と聴いても

「えー…。」と言って笑っていらっしゃいます。

「○○さん!」「昭和16年×月△日です!」「○○さん!80歳ですよ!」

と伝えると


「80!?え~!?」


「わっはっはっは!」と二人で大笑いです。

「もう、わからんもん!」と。


いやあ、楽しい受診となりました。

まあ生年月日なんて忘れたって別にいいですよね。たまに笑って過ごせれば。


ありがとうございました。

また行きましょうね。年齢を聴きますよ。


写真は朝の新町漁港。

投げ釣りをしている人がいましたよ。



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