家に帰りたい
気持ちのいい秋晴れが続いております。 11月も中盤を迎えいよいよ「年末」が見えてきましたね。 さて、先日そこそこご依頼が詰まっているある日の午前中に一本のお電話をいただきました。
「緩和ケア病棟に入院されている叔父さんを1時間でもいいので家に帰してあげたい」
とのご相談でした。しかも「今日」ということで一瞬頭を抱えてしまいました。お昼前に少し時間が取れそうでしたので家までお送りすることはできるけれど、1時間後に病院に戻る行程はどうしても取そうにありません。そこで「戻りが夕方でよければ私が対応でき、どうしても1時間で戻らなければならない場合は他の業者さんを探す」という旨をお伝えしました。その後看護師さんに相談して、お昼から夕方でも大丈夫という外出の許可がおりたとのことで、少しの間ですが帰ることになりました。 お迎えにあがると姪御さんと奥様がお待ちで、急な願いが叶ったととても喜んでいただけました。どうやら数日前からご本人様より「少しでいいから家に帰りたい」という希望があり、ご家族様と看護師さんとで検討されていたそうなのですが、ご本人様のお気持ち中で「この日に帰る」ということが決定してしまっており、とても楽しみにされているようで、当日の体調もよかったことより慌てて連絡をしたとの事でした。どうにか時間を作ることができて本当によかったです。 体調はまあまあとの事でしたが、何ぶん緩和ケアを受けている方ですのでひとつひとつの動きが何とも辛そうです。自宅でもし痛みが出てきたときに飲むための痛み止めのお薬を持って帰るのですが、もし飲まなかった場合は必ず看護師さんに返却するよう私が言付かりました。病院への戻りはご本人様だけになるからです。 自宅までの道中は奥様が「ここはどの辺り」「もうここまで来たよ」などと声をかけ、ご本人様は時折「う~ん…。」と返しじっと外を眺めます。 さあ、ご自宅につきました。静かな住宅街に車が着くと、一時帰宅を知っていたのか、近所の方が数人出てきて歓迎してくれました。ご自宅のソファまでご案内し私は一度離れます。 夕方お迎えに行くと戻る準備はしているものの、奥様は「帰りたくないって言うんですよ…。」と、困った様子。
「明日は何時や?」
と奥様に聴きます。ご家族様もできることなら何度か帰してあげたいと思っておりますが、翌日に帰れるかどうかはまだ決まっておりませんので、「まだわからんと」と返します。「は?やけん何時や?って」と繰り返しながらそれでもきちんと車椅子に移り乗車する事ができました。病院に戻る車中でも「明日は何時ですか?」と私に聴いたり、「何で戻らんといかんとかいな」「どこも悪くないとに」などと独り言を繰り返されておりました。数時間でしたが自宅にいる間に知り合いの方が何人も顔を見せに来てくれて、あっという間だったそうです。 無事に病院のベッドに到着。 痛み止めも使わずに看護師さんに返却できました。 翌日の帰宅はありませんでした。
その次の日にもう一度帰る予定でご予約をいただきましたが、体調がすぐれず直前にキャンセルになってしまいました。直前のキャンセルは他のご依頼をお断りしている事もあるため本当は困るのですが、このような場合は止むを得ませんね。こればっかりは仕方がないです。 さあ、また体調の良い時に少しでも帰る事ができるといいですね。 写真は夕暮れの大口海岸。