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執筆者の写真坂田大輔

海を眺めて

 ひと雨降ったのちに急激に冬の寒さになりましたね。心なしか交通量も増えたように感じ、ぐっと年末らしさが迫ってきました。


 さて、先日は病院を退院され、施設に入居される方のお手伝いをさせていただきました。病院のロビーにお迎えに上がると、ご家族様が大勢でいらっしゃっており、エレベーターから降りてくるご本人様を今か今かとお待ちでした。患者様は男性で、奥様、お子様、お孫様といらっしゃった様です。

お待ちの間に娘様が私のもとへいらっしゃり、「車に乗る前に父に少しだけ海を見せてあげたいのですが、可能でしょうか?」とおっしゃいます。スケジュールにも余裕がありましたので、「もちろん大丈夫です」と返しました。(余裕がなくてもできる限り対応したいです!)


 ご本人様が看護師の方と一緒に車椅子でいらっしゃり、「久しぶり~。よかったね、退院よ。」と、大歓迎を受けます。車椅子を移る際はやや力が入ってしまいましたが、無事に乗り移り出発です。病院を出てすぐ近くの海へ。この日はちょうど穏やかに晴れた日でした。海を見ながら娘様が優しく話しかけます。「久しぶりに外に出たね。」「きれいだね。」ご本人様はじっと海を見つめたまま表情を変えず何も応えません。しばらくの沈黙。ときどき娘様がポツリ、ポツリと話しかけます。ザ~っと波の音だけが響き、時間が止まったように感じました。


 「よし、じゃあ行こうか。」娘様がおっしゃり、出発です。そう遠くない施設でしたので、すぐに到着しました。施設の方々が歓迎します。ご本人様は変わらず沈黙されており、静かに施設内へ案内されてゆきました。


 どこの施設もまだまだ、面会しにくい状態かと思いますが、少しずつ緩和されていくといいですね。あの穏やかな海を眺めた数分間がご本人様や娘様の思い出になるといいなあと思います。

ありがとうございました。


写真は深江漁港の入り口。 山と海と、青い空白い雲。



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