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  • 執筆者の写真坂田大輔

懐かしい場所

気持ちの良い秋晴れが続きましたね。しかし予報ではこれから寒くなるようですね。体調を崩さないように気を引き締めてまいりましょう。


さて、先日は長期ご入院中の方の一時外出のお手伝いをさせていただきました。お迎えに上がると長男様と次男ご夫婦がお待ちでいらっしゃいました。病院のスタッフの方と一緒に車椅子に乗ったお母様が出ていらっしゃり、長男様が「よお~!母さん、久しぶり!」と声をかけると「まあ!○○ちゃん!」としっかり名前を憶えていらっしゃり、嬉しそうに大きな声でご挨拶をされました。とてもお元気そうな94歳の女性です。よく面会に来られているご家族様がおっしゃるには、こんなに元気にお話をすることはあまりなかったとのことで、驚いていらっしゃいました。乗車してまずはご本人様の生まれた家に向かって出発です。道中景色を見ながら、看板を読み上げたり、「ここはどこ?随分変わったねえ。」「どこに向かいようと?」「ビニールハウスがいっぱいやねえ。」「稲やねえ。」その他家族についてなどの質問を長男様にずっとお話されていらっしゃいました。長男様も勢いに圧倒されつつ、何度も同じ質問をされても、苦笑いとともに丁寧に応えていらっしゃいました。


生家は現在遠い親戚の方が住んでいらっしゃり、家も建て替わっていましたが、地形や生えている木を見て少しずつ記憶がよみがえって生きているご様子でした。「◇◇ちゃんは?」などと何人ものご親戚の方の名前を口にされたり、周りの木を見て柿の木に登って取った思い出などを断片的にお話されておりました。


その次は、嫁いだ先の家に移動しました。そこでは長男様の奥様とお子様(ご本人様にとってのお孫様)がいらっしゃり、長男様がご本人様にお孫さんであることを説明しますが、なかなか理解が難しいご様子でした。どうにか納得して、「ああ~、そうね。立派に育ったねえ~。」と嬉しそうにおっしゃっておりましたが、長男様はそのあと同じ説明を何度もされていらっしゃいました。しばらくお庭ですごしたのち、病院に戻る前にせっかくなので、家の近所で行きたい所があるかと聴くと、裏山のお宮に行きたいと即答されました。なかなか傾斜がきついので、はじめは階段の下の鳥居のところで拝んでいただこうか。という話になりましたが、息子様同士で、「ここのスロープから行けるかもしれないよ。」「いやあ、そこは無理やろう。」と検討された結果、私もご本人様のお宮に行きたいと即答されたご様子を見て、どうにか登りたいと思っており、とにかく行ってみることになりました。実際なかなか傾斜とカーブのきつい坂道でしたが、坂道のコンクリートにギザギザの滑りにくい加工がしっかりと施されていたので、どうにか登ることができました。小さなお宮ですが、ご家族のみな様にとっては大切な神様です。しっかりと手を合わせていらっしゃいました。落ち葉を持って帰りたいとのことで、数枚お持ちになられておりました。

下りはお孫さんも手伝ってくださり、バランスを崩したり滑り落ちたりしないように、みんなで支えていただきながらゆっくりと帰りました。


全行程3時間ほどの外出をたっぷり満喫され、病院へ戻ると、玄関まで病院のスタッフの皆様がお迎えに来てくださいました。大勢のご家族様に囲まれて、にぎやかだったひと時が終わってしまうことを察知されて、別れ際にはとても寂しそうな表情をされておりました。ご家族の皆様は「じゃあね、また行こうね。」と別れを惜しみながら声をかけていらっしゃり、ご本人様は口を一文字に結んで手を振っていらっしゃいました。ほんの数時間しか過ごしていない私ですが、涙が出そうになってしまいました。


きっとまた行きましょうね。

ありがとうございました。


写真はたっぷり実った稲と可也山。秋の夕暮れ。




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