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  • 執筆者の写真坂田大輔

大柄な方のご退院~ノーリフトケア~

黄色く染まった銀杏の葉が美しく揺れております。ここ数日でぐっと気温も落ち、秋が深まってきました。

 

さて、先日は大柄な方のご退院のお手伝いをさせていただきました。お迎えに上がると、ベッド上での準備は整っており、病棟のスタッフの方が車椅子への乗り移り介助をされるので、見学をさせていただきました。大柄な男性と女性スタッフの二人で安全に移ることができました。

 

実はつい数週間前に、施設からご自宅への送迎をさせていただいたばかりで、その時は少し足に力が入っていたのですが、やはりご入院されて体力を落とされたのか、病院での移乗では足はつかずに、全介助の状態でした。そして、どういう訳か退院時のお荷物の中に移乗用の*スライディングボード(*以下ボード)があったのに、その時は使われておりませんでした。病院のスタッフの方とご本人様の会話を聴いていると、理由はわかりませんが、どうやらご本人様がボードを使いたくないような口ぶりでした。

 

ともかく、医師や薬剤師の説明を受けてご自宅へ向けて出発です。

到着し今度は、私がベッドへの移乗介助をさせていただく番です。ボード無しでも一人で移乗介助をすることもできますが、今後は息子様がご自宅で介助をすることもありますので、安全のためにぜひ、ボードを使っていただきたいと思い、ご本人様に一度使ってみましょうと、お話をさせていただきました。

 

息子様も真剣なまなざしでいろいろと聴いてくださるので、自分の介助の方法をお話させていただきました。


・お尻の下にボードをしっかりと入れること。(お尻がボードを押してしまわないように。)

・ベッドの高さを調節すること。(出発地点を少し上に設定する。)

・相手と自分の重心を近づけること。

・ご本人様の腕がベッドや車いすにつかまり、移動の妨げにならないようにすること。

・お尻の到着地点を、横になったときに上下に移動しなくていい位置に設定すること。

・頭を下げてお尻を少し浮かせる自然な動きを促すこと。(わきの下から持ち上げても動かない。痛い。)

・重たい骨(骨盤・肩甲骨)を支え、動かしてあげること。

 

などなどです。これらはボードが無くても心がけるべきことだと思っており、さらにボードがあればとても安全です。そして、無事にベッドに移ることができました。

 

このようなボードを利用した移乗をはじめ、様々な用具を利用してご利用者様の安心と介護者の負担軽減を目指した介助を「ノーリフト(ノーリフティング)ケア」と言って、もうずいぶん前から普及されるべきだと言われてきました。ところがどういう訳か、なかなか広まらず、病院や施設、個人宅へ行っても利用している方は1%に満たない程度です。普及しない理由として、一つは用具自体のコストがかかっていることはあるのかもしれませんが、もう一つは今回のご本人様のように、ご利用者様が「まだ、そんなもん使わんでも大丈夫!」と見慣れない道具の利用を拒んでしまっていることもあるのかもしれません。ただ、ご利用者様としては、自分の身体がいとも簡単に、あたかも(言葉は良くないのですが)「荷物」のようにスムーズに動いてしまうことにより、抵抗を感じる部分もあるのかもしれない、ともと思います。そこはやはり介助をさせていただく側が、できるだけ自然な身体の動きを促しながら、その安全性をしっかりとお話をして、ご理解をいただく必要があるのかもしれません。

 

介護の仕事を始めた頃から、ご利用者様の安全はもとより、理論に基づいた介護技術や福祉用具を使い、自分の身体をしっかり守って、健康な身体で長く仕事を続けることができるように教えられ、心がけてきました。それはご自宅で介助されるご家族様も同じことだと思います。

 

これからもっともっと、自然な動作でかつ、安全な介助方法が普及していくことを願います。

 

写真は雨の深江神社。

銀杏はまだ少し青さが残っていますね。この木は銀杏の実がなります。



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