お正月飾り
さあ、2022年も残すところあと一日半となりました。今年もたくさんの方々にお会いすることができ、また支えていただき、無事に年を越すことができそうです。本当にありがとうございました。来年も皆様にとって素敵な年になりますように。
さて、先日は施設にお住いの方が今まで暮らしていらっしゃったご自宅に年内に一度帰りたいとのことで、お手伝いをさせていただきました。
今年の6月まで、一軒家で一人暮らしをされていらっしゃったのですが、体調を崩されご入院された後、施設にご入居されました。その家にはもう、どなたも住んでいらっしゃらないのですが、施設のスタッフの方が作られたお正月飾りをとても気に入られ、ご自宅の玄関に飾りたいとおっしゃったそうです。長く住まれたご自宅ですので、何も飾らないと寂しいのでしょう。
お迎えに上がると準備もできており、すぐに出発です。なかなか外出する機会も少ないので、家までの海沿いの景色をとても楽しまれていらっしゃいました。「あ~、いいところですね~。生きててよかった。」と喜ばれる90代の女性です。
ご家族様のお話では玄関に飾りをつけて、すぐに施設に帰るとのことでしたが、ご本人様としては、せっかく久しぶりに帰ってきたのにそうはいきません。一応「降りられますか...?」とお伺いすると、「当り前じゃないの、降りなくてどうするのよ。」とおっしゃいます。「で、ですよね~。」
二人で降車して、すぐに玄関にお正月飾りを取り付けました。「そうそう。」と満足そうです。「(家の)中にも入られます?」とお伺いすると「そうね、ちょっと。」とご自宅に上がります。ご家族の方がときどき風を通してくださっているようで、ところどころ小さな窓が2センチほど開けられていて、ムッとする空気のよどみはありませんでした。そして、今度は電気をつけ、大きな窓と雨戸をあけて部屋に光と新鮮な空気をいっぱい入れます。止まっていた時間が少しだけゆるっと動き出すような感じがします。
「えーと、これとこれと…。」とケースの中の冬物を物色します。たいそうな衣装もちの方で、次から次にたくさん出てきました。「これもこれも、全部あたしが編んだのよ。」と得意げにセーターを引っ張り出します。若かったころのご本人様がこの家で編み物をされる姿を想像して、少し嬉しくなりました。最後にエプロンまで出してきて、「それはどうするんですか?」とお伺いすると、「いやあ、私が朝ごはんなんか作るときに使うのよ。」「○○さん、朝ごはんは施設の方が作ってくれるから必要ないんじゃないですかね?」と聴きましたが「いやいや何言ってんのよ、朝ごはんぐらい作るわよ~。」と当然のようにおっしゃるので、「そうですね、では持っていきましょう。」と手編みのセーターたちと一緒にエプロンも袋に詰めました。久しぶりにご自宅に戻って、独り暮らしの頃の記憶と、いろいろとこなさなければならない日々の暮らしの緊張感のようなものが甦ってきたのでしょう。
更に家の中を移動すると、小さなプラスティックの鏡餅を発見したので、「あ、こんなのがあった。これ、ここに飾っとこ。」と少し笑いながら床の間に置きました。
そして、帰り際に郵便受けを覗くと、ごっそりとダイレクトメールや封書が詰め込まれていたので、「後で◇◇さん(ご家族の方)に選別してもらいましょう。」と、まとめて取り出して持って帰ります。
帰り道も穏やかに海を眺めていらっしゃいました。
誰も住んではいませんがこれでご自宅にもお正月が来ますね。よかったです。
またときどき帰りましょう。
ありがとうございました。
写真は船越北伊醤油さん辺りからの可也山です。
皆さま今年もありがとうございました。
良いお年をお迎えください。
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