自宅介護の基本技術
- 坂田大輔
- 2018年8月24日
- 読了時間: 5分
今週も台風がやってきましたね。 しかも二つも。 昨日対応させていただいた県外のお客様も新幹線のダイヤが大幅に乱れる中 ギリギリで帰宅できたとの事で一安心でした。 さて、先日は病院からご退院される方のお手伝いをさせていただきました。 ご本人様は立位がとれず移乗に関しては全介助を必要とされる方で、これから娘様ご夫婦が自宅で介護を始めるという状況だったようです。 今まで病院で看護師の方がしてくれていたことを自分たちでしなくてはいけないという事で、初めての事わからない事だらけで娘様ご夫婦はだいぶ不安だったようです。 病院でも看護師の方にいろいろと教わったり、新しい介護ベッドや車椅子の扱い方も教えてもらったけど、何しろ初めてですし、そんなにたくさんのことを一度に覚えられません…。との事でした。大変ですよね。はじめは誰でもそのようになることでしょう。でもやりながら覚えていくしかないんですよね。 娘様ご夫婦は本当に熱心でいらっしゃって、私が移乗を行うときも、「コツを教えてください。」とお二人でご覧になっていらっしゃいました。 私もせっかくの機会ですので、基本的な事をいくつかお伝えさせていただきました。 それは、事故を防ぐことはもとより、介助者が怪我をしないで介護を続けていくための基本です。 介護において一番多いと思われる怪我。それは腰痛でしょう。 主な原因は無理な姿勢を長く続けたり、力任せに動かそうとすることによります。 どうすれば回避できるか。一つ目は着替えや排せつ介助、体位変換などを行うときに「ベッドを上げる」という事です。 介護ベッドはベッドの高さや背もたれの角度、足の高さを変える事ができます。例えばご自身の用事もあり時間に迫られてご本人様の着替えをしなければならない時、ついついベッドが低いまま、サイドレール(ベッドの柵のようなもの)を付けたまま介助をしてしまう事もあるでしょう。 ウィーーン…… とベッドの上げ下げをする時間がどうしても長く感じてしまうんですね。しかし、その少しの時間を惜しまずにめいっぱいベッドを上げてみましょう。 ちょうど大人が立った状態で腰から胸の下あたりまで上がります。腰への負担はかなり減らす事ができます。もちろん転落することがないよう注意が必要ですし、介助が終わったら速やかに下げる必要があります。 私自身施設での介助、特に夜勤などで大勢の排せつ介助を決まった時間内に済ませなければならない時や、介助を行おうとしているときに次のナースコールが鳴って対応を迫られている時など…、ベッドを上げる時間を惜しんで急いで介助を行ってしまうと必ず後で腰が痛くなりました。 それからは時間がなくても落ち着いてベッドを上げるようにしていました。そうすると心にも余裕ができて丁寧な介助をすることがでたように思います。 もう一つは移乗の方法です。「相手(ご利用者様)の重心の位置を意識すること。」具体的には相手の重心と自分の重心をできるだけ近づけることです。 重心が離れると相手の重心に引っ張られたり自分が振り回してしまい、転倒の危険が増します。 例えば介助者が高い姿勢のまま相手のわきの下に両手を入れて引っ張り上げようとしても上半身が伸びるだけで、おしりは上がりません。力のある介助者はそのまま腕の力で持ち上げて移乗する方もいらっしゃるようですが、相手の方は自分の体重が全てわきにかかって痛いですし、不自然な立ち上がり方になります。 どんな人でも座位から立ち上がる時には必ず頭を前方向にお辞儀をするように下げてから動き始めます。その姿勢を取らせて差し上げることで、立ち上がりを促す事ができます。このことにより「介助されている感じ、物を扱うように運ばれている感じ」ではなく「自分で移動している感覚」を与える事ができます。 そのためには自分が膝を曲げもしくは膝を床につき、低い姿勢をとり相手に近づくことが必要になります。立位が取れない方の場合は上半身を介助者の上半身で支えながら密着し両手で股関節を支え移乗します。 また、スライドボードを利用するのも良いと思います。 今回はおよそこの2点をお伝えさせていただきました。文章ではなかなか伝わりにくいですが、とても大事なことだと思っており、今まで介護業界でたくさん勉強させていただいた介護技術は本当に宝物で、これからも生かしていきたいと思っております。 そして常に介助をする際に、「本当にこの姿勢で大丈夫なのか。」「ふらついたときに安全に支える事ができるか。」ということを思いながら、ひとつひとつ丁寧に行っていきたいと思い直すきっかけになりました。 自宅での介護は大変だとは思いますが、ご本人様は本当に喜んでいらっしゃることと思います。 解らない事や不安なことは、周りのケアマネージャーさんやヘルパーさんに聴けばきっと優しく相談に応じていただけると思います。 これからも安全に介護生活を送ることができますように。 ありがとうございました。 写真は台風一過の深江の空。 まだまだ夏は終わらないようです。

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