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  • 執筆者の写真坂田大輔

意思の疎通

台風が来るとのことでしたが、糸島には寄らずに東へ行ってしまいました。まだ厚い雲が多いのですが、暑さも増していかにも「夏が来るぞ!」といった感じです。


さて、先日は長期入院中の方の他科受診の付き添いをさせていただきました。半年ぶりの受診で、前回は他の関係者の付き添いもあったのですが、今回は私と車椅子をご利用のご本人様と二人となりました。


半年ぶりにご挨拶をして出発です。

車に乗る前には黙って車椅子に座っていらっしゃったのですが、走り出してしばらくすると、途中道路のつなぎ目などで少しカタンと揺れるたびに「あー」「あーあー」と声が聞こえてきました。ルームミラーでご本人様の様子を見ると少し顔をしかめている感じがしたので、できるだけ揺れないようにゆっくり走りました。それでも高速道路などでは限界がありますので、天気の話をしてみたり、落ち着けそうな音楽をかけてみると、少し「あー」の数が減り表情も穏やかになったような気がしました。ところがしばらくするとまた同じ声が聞こえてきました。それは車の振動とは関係ないタイミングになっていました。う~む...。「あー」の原因はわかりませんが、私に今できることは丁寧に運転して介助することだけでした。


付き添いの方が他にいらっしゃれば正面で降りていただくのですが、私と二人ですので、駐車場で降りていただき、一緒に受付まで向かいます。こんな時はできるだけ普通に話しかけるようにしています。返事が返ってくることはないのですが、話しかけます。


「(車を)降りますね。外は蒸し暑いですねえ」

「さあ、受付に行きましょう」

「結構混んでますね」

「ここで少し待ちましょうか」

「今回の番号は○○○番です」


などなど、普通に。


ときどき検査の内容などについて目を見てお伝えするときなどは、しっかりとうなずいてくださいます。



そして、検査~待ち~検査~待ち~検査と続いて、ようやくあとは診察だけという「待ち」の時間に


「あ~」

「ああ~」 と、始まりました。


「待ちが長いですね~。あと少しだと思いますよ。」と話しかけながらも「あー」と声を発します。私を見て言うわけではなく空中に向かって声を発していらっしゃいます。


「ちょっと移動してみましょうか」と診察室から少し離れますが、窓際に行ってみることにしました。薄い日よけがかかっていて外は少し見にくいのですが、なんとなく静かに外を眺めていらっしゃいました。

お、ここはしばらく居られるかなと思っていたら、そんなときに限ってすぐに名前を呼ばれてしまいました。


結果はまずます。先生のお話もしっかり聴いていらっしゃり、最後に「また半年後、元気な姿を見せてくださいね。」と先生がおっしゃったときは少し嬉しそうに大きくうなずいていらっしゃいました。


午前中みっちり使っての受診が終わり、元の病院に返ります。帰り道はほとんど発声はありませんでした。


お話や意思表示ができない方、しない方、終始目をつぶっている方、などなど、いろいろな方がいらっしゃいますが、「意思の疎通」をとることはとても難しいことです。たまにしかお会いしない方ならなおのことです。


でもこちらの声はきちんと聞こえているのだと思うのです。


むしろ「聴いている」


と思うのです。ですから、できるだけお声かけをさせていただき、自分が介助されている気持になって介助をすることができたらいいなあと思います。


そうでなければ「台車で荷物を運んでいる」ことと変わらなくなってしまいますから。


いろいろな場面で「ただ運んでいる」ようにしか見えない介助者を見かけて悲しい気持ちになります。


さて、次は半年後(2023年です!)ですね。元気に受診しましょう。

ありがとうございました。


写真は加布里漁港です。 海も空もきれい。




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